カンカン帽のなかでも、天然ストローブレードを使ったものは、素材の風合いや軽さが魅力です。麦わらの質感を活かしながら、職人の手仕事によって美しいシルエットに仕上げられます。ここでは、天然ストローブレードを使ったカンカン帽の製造工程を紹介します。
1. 素材の準備 – 麦わらを厳選する
カンカン帽に使われる天然ストローブレードは、主に小麦やライ麦の茎を乾燥させたものから作られます。良質なストローを得るためには、次の条件が重要です:
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まっすぐに育った麦わら:均一な幅に整えやすく、美しい編み目になる
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繊維がしっかりしたもの:強度があり、帽子の耐久性が増す
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色むらが少ないもの:自然な黄金色で仕上がりが美しい
刈り取った麦わらは、天日干しで十分に乾燥させ、柔らかさを保つために蒸気処理を施してからブレード用にカットされます。
2. ブレードの製造 – 麦わらを編み込む
天然ストローを細長いリボン状に編み込むことで、帽子の元となる「ブレード」が作られます。編み方にはいくつかの種類がありますが、カンカン帽には平織りや綾織りがよく使われます。
編み込みは職人の手作業で行われ、一本一本の麦わらを慎重に組み合わせながら均一な幅に仕上げます。麦わらは天然素材のため、強く引っ張ると割れたり裂けたりするため、微妙な力加減が求められる繊細な作業です。
3. ブレードの縫製 – らせん状に組み上げる
編み上げたブレードは、専用のミシンを使い、らせん状に縫い上げながら帽子の形を作ります。
天然ストローブレードの場合、素材が硬く割れやすいため、縫製には高い技術が必要です。特に、カンカン帽の特徴である平らなクラウンとエッジの効いたフォルムを作るには、精密な縫製が不可欠です。
縫製の際は、
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ブレードのつなぎ目が目立たないように揃える
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均一なテンションで縫い上げる
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ストローが裂けないように針の種類や糸の太さを調整する
といった細かい工夫が求められます。
4. 成形(ブロッキング) – 金型を使って形を整える
縫い上げた帽体を、カンカン帽専用の木型や金型にはめ込み、スチーム(蒸気)を当てながら形を整えます。
天然ストローは吸湿性があるため、スチームを当てることで柔らかくなり、形を作りやすくなります。この工程では、特に次の点に注意しながら作業が進められます:
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クラウン(頭頂部)をしっかり平らにする
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ブリム(つば)を均等な角度で広げる
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エッジをきちんと直角に立ち上げる
カンカン帽特有のカッチリしたフォルムを作るために、型にはめた状態で圧力をかけ、乾燥させます。
5. 硬化処理 – しっかりとした張りを出す
天然ストローは比較的柔らかいため、カンカン帽に必要な硬さを出すために、硬化処理を施します。
伝統的には、天然の澱粉糊やゼラチンを使用し、帽子全体に均一に塗布してから乾燥させます。現代では、強度を増すために合成樹脂を使うこともありますが、天然素材の風合いを活かすために昔ながらの技法を守る職人も多くいます。
硬化処理の加減によって、帽子の仕上がりの硬さが決まり、しっかりとした形状を保つことができます。
6. 乾燥と仕上げ – 細部を美しく整える
硬化処理を終えた帽子は、一定時間乾燥させ、形をしっかり固定します。乾燥後、余分な部分をカットし、エッジを滑らかに整えます。
この工程では、
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ブリムの長さを均一に揃える
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クラウンの角が崩れないように補強する
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全体のバランスをチェックする
といった調整が行われ、最終的なフォルムが完成します。
7. 飾りつけ – カンカン帽の個性を演出する
カンカン帽の印象を決定づけるのが、クラウン部分に巻かれるリボンや装飾。
伝統的なカンカン帽では、黒や紺のグログランリボンが一般的ですが、最近ではパターン入りのデザインも人気です。
また、ヴィンテージ調の雰囲気を出すために、あえてリネン素材の装飾を施したりすることもあります。
8. 最終チェックと仕上げ – 職人のこだわりが詰まった最後の工程
完成した帽子は、最終チェックを行い、細部まで丁寧に仕上げられます。
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縫製のほつれや糸のズレがないか
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硬化処理にムラがないか
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クラウンとブリムの角度が整っているか
といった点を細かく確認し、微調整が行われます。
天然ストローブレードのカンカン帽は、一つひとつが唯一無二の作品
天然ストローを使ったカンカン帽は、素材の個性を生かした一点もの。同じ麦わらでも、色合いや繊維の細かさによって表情が変わり、それぞれに違った風合いがあります。
職人の技と伝統製法を守りながら作られる天然ストローのカンカン帽は、涼しげで軽く、夏の定番アイテムとして愛され続けています。